chapter 5 豪華客船とワルツ

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・・・・・・ 大和のメモに書かれていた リドデッキのカフェレストランはすぐに見つかった そこにはコンチネンタルスタイルのビッフェの 朝食が用意されていた 宝石のように美しくて色とりどりの 美味しそうなビュッフェ料理に心が踊る 旅行の楽しみはまさに朝食だ またおなかがグーッと鳴った 客席を見渡してみると彼はまだ 来ていないみたいだった 杏奈はお皿を手にして まずはマンゴーとメロンを取ってから 焼きたてのパンをローラー式トースターに通して パリッとさせ3種類のバターを取った そこからはこういう場所でしか食べれない 湯煎のスクランブルエッグや高級ハム 新鮮な魚介類のサラダなど 手あたりしだい目の前に差し出されてる 朝食をお皿に乗せた 少し欲張りすぎたかなと思いながら 床から天井まで届くガラスがはめこまれた 窓際のテーブルに着いた 「わぁ」 その景色を見ると心が洗われるようだった 見渡すかぎり広がっている大海原に 涙が出るほど感激した 何処までも青く障害物一つなく絵具で 塗ったかのような空と海の単一二色の青だった 夕べの出航時はもう夕方で朝のこんなにも 天気の良い澄み切った真っ青な海を 見るのは初めてだった 海はいつもディアマンテの秘書室から眺めていたが この景色は比べ物にならなかった つい昨日の事なのに家族や職場の仲間の ことが遠い昔の様に思えてならなかった 「景色を楽しんでいるかい?」 深みのあるその声に杏奈はドキッとした 声をかけられて見上げた途端 なぜか杏奈の鼓動は早鐘を打ち始めた 今朝起きて気が付いた 夕べきっと自分をベッドに運んでくれたのは彼に違いない
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