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体がとても軽く感じられ
これがダンスの効果なら地元に帰ったら
すぐにダンス教室に入会したいぐらいだ
しかしたとえワルツを完璧にマスターしても
こんな気持ちになれない事は
自分でもわかっていた
すべて彼のおかげだ
たとえフェイクの夫婦でも彼はこうして
今自分の傍に来て
自分との時間を楽しむことを教えてくれようとしている
彼とダンスをしているこの何分間かで
まるで生まれ変わったような気にさえなった
どれぐらい時間がたったのだろう
やがて息が切れて体のあちこちが
筋肉痛を訴え出した時
大和がペースを少しづつ落として
フィニッシュを迎えた
ハァハァ・・・
「へとへとだ・・・ 」
ハァハァ・・・
「わ・・・わたしも・・・ 」
彼は低く笑い足がもつれてフラフラしてる
杏奈を支えてソファーに座らせ
自分も崩れるように隣にドカッと座った
頬が上気し大汗をかいてヒールを履いた足が
痛かったが心はまだ二人で導き出した喜びに
浸っていた
ヘアスタイルもメイクも乱れているのは
分かっていたが
杏奈は最後には彼におじけづくことなく
ステップを踏めたことに満足していた
ハァ・・・・・・
「こりゃ・・・午後のリモート会議は
集中できないな・・・ 」
彼は立ち上がってう~んと伸びをした
ポロシャツとスラックスの間から
日に焼けた彼の腹部が丸見えになった
そして彼はスラックスを腰で履いていたので
カルバンクラインのロゴの
ボクサーパンツまで丸見えになった
「またディナーの時に会えるね 」
そう言ってダンスで頬を赤くしているのか
彼の下着を見てしまって赤くなっているのか
わからない杏奈に彼は微笑んだ
杏奈は手で熱い頬をあおぎながら
立ち去る彼の後ろ姿を見送った
「まぁ・・・彼
あなたのために仕事を中断してきてくれたのね
大切にされていいわね~」
キクエさんが笑って杏奈に言った
いつまでも体の熱が冷めず高揚感が失せないのは
生まれて初めて自分を優雅だと感じられた
喜びのせいなのか
たくましい腕に抱かれて
踊ったせいなのか・・・
杏奈には判断がつかなかった
ともかくその理由はなんであれ
今の杏奈は幸せだった
複雑なダンスに挑戦して正人との婚約破棄以来
失った女としての自信を取り戻せることが
出来つつあった
さらに仕事以外で大きな達成感を得ることもできた
みんな彼のおかげだ
何より杏奈は自分を優雅で美しいと感じるという
素晴らしい体験をした
もしこのまま彼と一緒に過ごす時間を
もっと持ったなら
あの正人との一件で粉々になった女性としての
自信をつけさせてもらえるだろうと
期待せずにはいられなかった
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