chapter 5 豪華客船とワルツ

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メイクは式の時に出会った「ミラージュ」の メイクアップチームに杏奈はかなり レクチャーを受けていた そのレクチャーの幅は広く基礎化粧から訪問メイクまで ミラージュのメイク道具一式を贈呈されていた そして出かけた先々で人々にメイクの事を聞かれたら かならず「ミラージュ」を使っていると話せと 約束させられていた 「このご縁を一生のものにして 大切にしていけますように」 と韓国語で丁寧な執筆の文章が刻まれた パッケージを見ると いかにミラージュが掴んだお客を 離さない覚悟がわかる プロフェッショナルの真髄の彼女達が いつか世界進出をするのは杏奈は容易に 想像できた アイメイクは薄付きだけど まつ毛だけを強調するメイクで 肌は詐欺的な白肌になる下地を首や腕にまで塗る・・・ そしてハイライトのパウダーをはたいて 色んな色をのせるのではなく 元の素材で勝負するのだ 髪は毛先だけ巻き ミラージュの艶だしオイルを付けると 照明に照らされるだけで艷やかに光る 今の杏奈の装いは10センチのパンプスと クリスタルビーズのポシェット のコーディネートとバッチリあった 自分が美しく装う事もこのフェイク婚プロジェクトの一つなのだとだんだん杏奈は自覚してきた    海運王の彼の周りには常に富とビジネスが 台風の様に渦巻いている そして自分はまさにその台風の目になったのだ 彼と釣り合う様にふさわしい装いをしなければ 彼が恥をかく・・・ 「おお!綺麗だ!」 部屋を出るとリビングで「マリーナニュース」 を手に待っていた大和の素直な称賛を受けて 杏奈の頬は熱くなった 「ありがとう・・・ あなたもすてき・・・・  」 杏奈も瞳を輝かせて大和を誉めた
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