chapter 5 豪華客船とワルツ

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黒のイブニングスーツと黒のボウタイをまとった彼は あまりにも素敵でどんな女性の心も ざわつかせることだろう 二人がメインホールに着くと さっそく彼はスーツだらけの人につかまり 雑談をさせられていた 洞察力と知性と冷静さを併せ持つ彼は 世界でも名だたる実業家達と 対等に渡り合っている 杏奈は社長ではなく新たに夫という立場にいる彼を また別の角度から見る感覚に 日に日に馴染んで来ていた さりげなく杏奈は彼の隣に立ち シャンパンを飲むゲスト達に交じって様子を眺めた さまざまな年齢層の男性がフォーマルウェアに 身を包む一方女性達も光り輝いていた そしてそれは首に耳に 目が飛び出るほど高価そうな宝石が 光り輝いているせいでもあった しばらくすると杏奈は自分が興味の的になっていることに気づいた 大勢の興味の目に晒されながら 小首をかしげて笑みを張り付け 素知らぬふりを一生懸命していた そんなものだからキクエに声をかけられた時は 心底ホッとした 「はーい!救助隊よ!」 キクエは笑って背後から杏奈の両肩を握りしめた 彼女は目の覚めるような赤のマリメッコの フレアスカートのドレスに 先のとんがったサングラス マリメッコの大ぶりのリボンといったいで立ちで いかにも踊る気まんまんといった感じだ 「孫のホノカよ!! あなたとちょうど年も合うし 話し相手になればと思ってね 」 「はじめまして! おばあさまから海運王の花嫁と仲良くなったと 聞いた時には信じられなかったけど 本当だったわ! どうか仲良くしてくださいね 」 「まぁ!こちらこそよろしく」 ホノカが嬉しそうに杏奈に手を差し出した 杏奈もしっかりホノカの手を握った 孫というだけあってホノカはキクエを 随分若くしたような感じで ショートカットがとてもよく似合う ハツラツとした女の子だった グリーンのノースリーブのトップスに 白のカプリパンツが素敵だった
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