chapter 5 豪華客船とワルツ

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お涙ちょうだいのスピーチ大会の後は 再び催し物に華やかさが戻ってきた 優秀だけどまだ無名なデザイナー達を 支援するファッションショーが派手な 音楽と共に開かれた 美しいモデル達が舞台を練り歩き その出品作の売上金のかなりの部分が 寄付金に充てられるオークションが開催された オークションは盛況で会場は一気に盛り上がった その時あるドレスに杏奈は目を引かれた ウエスト部分に美しいひだと細いパールの ストラップの飾りがついた深紅のドレスだった 軽い素材の素敵なティアードスカートが モデルが杏奈達の前でターンを決めた時に ふわっと舞いあがった 杏奈は思わずホゥッ・・・とため息をついた 自分はまだまだ全然へたくそだけど あんなドレスを着ていつか彼と踊れたら・・・・ そんなことを想像してうっとりと見ていたら 杏奈を見ていた大和が手を上げて  そのドレスを入札した 最初に大和が値をつけたが入札合戦は白熱し どんどん値は上がり ついには法外な額になった そして 大和と争っていた最後の一人が引き下がった オークションの木槌が高々に叩かれ 深紅のドレスは大和の物になった 会場には割れんばかりの拍手が鳴り響いた 「あれが欲しかったんだろう?」 杏奈は両手で口を押さえ興奮した声で言った 「でも・・・あんな額になるなんて・・・ いったい・・どうしたら・・・」 「世のためになることなんだからいいんだよ こう言う事に金を使わないと 「ディアマンテの海運王は自分の利益しか 頭にない強欲だ」と世の中に叩かれるんだ 」 クスクス笑って大和は気だるげな声で言った 「それに君のためにあつらえたようなドレス じゃないか 」 そう言った大和と目が合った途端 杏奈の中で何か素晴らしく甘い感覚が 体の中を駆け抜けて行った
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