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同い年の山崎正人と付き合い始めて
3年が経った今でも杏奈は正人に
出会えて本当に良かったと思っていた
あれは3年前共通の友人の家で知り合った
友人宅で鍋パーティをした時に杏奈の横に
座ったのが正人だった
彼は少し優柔不断で頼りない所があるが
細やかな気遣いが出来る人で
杏奈が好きな花を一緒に庭に植えるのを手伝ってくれたり
昼間特に何も用事が無くても電話やラインをくれた
彼のこのマメな所は杏奈の無口な公務員の父には
無い所で杏奈は気に入っていた
以前の杏奈は長女としての優等生気質が抜けなくて
何かを楽しもうとしてもすぐに
どこかブレーキをかけてしまう自分の性格に
悩んでいた
本能のままに行動する性格の妹と違って
杏奈は何をするにも慎重だった
そんな恋愛に激情的になれない杏奈を
彼はよく理解してくれた
「焦らなくていいよ
そんな杏奈ちゃんが僕は好きだよ」
と優しく微笑む彼は杏奈に人に心を許す事
そして身を許すことの幸せを教えてくれた
そして3か月前彼は杏奈にプロポーズしてくれた
厳密にいえばしてくれたかどうかわからないのだが
少なくとも杏奈が夢見ていたようなシーンではなかった
しかし早く実家を出たかった杏奈は正人が
「一緒に暮らしたい」
という頼りなげな言葉をプロポーズと受け取った
同棲などは世間体に厳しいうちの親が許さないと
杏奈は彼を説得し二人は結婚することを約束した
少し頼りない所はあるけれどとても
古風でまじめな男性だと信じている
杏奈が正人のことに思いを馳せて
白昼夢にふけっていると
勤務の終了ベルが鳴った
結婚に向けて色々計画を立てないといけない事が
沢山ある
二人の収入では婚約指輪は諦めてその資金は
新居やささやかな結婚式に使うつもりだった
親はどれぐらい結婚資金を出してくれるだろう
たとえ今彼はしがないサラリーマンで
安月給だとしても三流だが大卒で
正人の親は杏奈の父と同じ地方公務員なので
そこそこ裕福だ
そう言って杏奈が説得すると両親もなんとか納得してくれた
今夜にでも彼に電話しよう
そう考えて杏奈はパソコンの電源を切った
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