chapter 5 豪華客船とワルツ

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・・・・・・・・・・・・・ 大和の「楽しんでおいで」という言葉が まだ耳に残る中 杏奈とホノカ、キクエ一行は ブティックやカフェが並んだ並木道が美しい 島を観光した 今回の客船が入港した停泊地は 韓国ドラマで有名になった島で少し昭和の日本の 面影が残る街の魅力を杏奈達は満喫した 「ねぇ!あっちでいれたてのコーヒーがあるわよ」 「あっちはシャンパンのテイスティングをやってるわ」 気持ちの良い暖かい海風に吹かれながら 三人でワイワイ散策するのはとても楽しかった 今まで杏奈にとってショッピングはあくまで 自分に必要品を購入することで いつも値段と相談していたので ストレス解消にはあまりならなかった しかし爽やかな風の中をのんびりと歩きながら 陽光を浴びて宝石の様に並んでいる露店を見ていると 一つ一つ足を止めて店を覗かずにはいられなかった 大和さんも来ればよかったのに・・・ 杏奈はため息をついた 相変わらず彼は朝からリモート会議室にこもって 業務報告会にいそしんでいた もっとも彼にとってこのクルーズはハネムーンという 名の自社のプロモーションなのだから 彼の中ではこの旅を楽しむという事は どうやらあまり頭にはないようだ 「杏奈!シャンパンのテイスティングよ!」 そう言ってキクエさんが 杏奈にシャンパングラスを渡した 「どうしてセレブって昼も夜もシャンパンを 飲むのでしょう? 私はお酒が飲めないんです 」 アンナはシャンパンのグラスを受け取り 脚の部分を持って掲げながら薄い黄金色の 液体をマジマジと見つめた
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