chapter 5 豪華客船とワルツ

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・・・・・ 「え~と・・・・あっ!あった!ここだわ 」 船に戻ると杏奈は大和がリモート会議をしているという 右舷の先の大きな会議室の前で足を止めた まるで一つの都市のような巨大な 豪華客船の中をウロウロしてやっとみつけた ここは船底部分にあたるのだろうか 彼らが使っているという大きな会議室の 木のドアには磨き抜かれた 真鍮のネームプレートに 「ディアマンテCo., Ltd特別会議室」 と書いてあった そっとドアに杏奈は耳を付けてみる すると数人の話し声が聞こえていた おそるおそるドアをノックすると 「どうぞ」 と言う彼の声を聞いて杏奈はドアをあけた とても広いスペースで数個のモニターが壁一面に 張り巡らされ色んな国の人が こっちを向いてしゃべっていた そして部屋の端の事務机には 数人の見知らぬディアマンテの社員と思える人が 杏奈を見てハッとして立ち上がり みんな一斉に杏奈にお辞儀をした ・・・?・・・ 誰にお辞儀しているの? そこで杏奈もハッとした そうだ! 自分は今はしがない秘書室の一人ではなく 社長の彼の妻だったんだ 秘書という仕事は社長と社員が会議などを する際に極力邪魔せずサポートをするため 自ら気配を消すことに長け その存在を知られることはなく 会議中は無視されることに慣れていた なのに今は自分が入って来ただけで スタッフが一斉に緊張してこちらを注目している こんな時にどういう態度だったら良いのだろう 戸惑いながらも杏奈も恐縮の思いでお辞儀を返した
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