chapter 1 血の繋がり

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・・・・・・・・・ 「そしたらさ! ピカピカのシルバーの アストンマーティンがお姉ちゃんの会社の 地下駐車場から出て来たんだよ! あんなすごい車見たの初めて! ハリウッド映画を見てるみたいだった!! 絶対どっかのボタンを押したら羽が生えて飛ぶんだよ! あの車」 高校生の末妹佐奈がジンジャーエールを 片手に興奮して言う ティーンエイジャーらしく 髪をポニーテールにして学校帰りなので 女子高のセーラー服を着ている 杏奈は姫野家の三女の佐奈の言葉を 平然と聞き流して 長い菜箸でフグ鍋をかき回していた 幼いころからいつも一緒だったので 末っ子の大げさな言い回しにはすっかり慣れっこだった 日本民謡の三味線のBGMが心地よく流れてくる 高級フグ屋の一室に陣取り 杏奈は佐奈と後輩のクルミと三人で フグ鍋をつついていた 佐奈とクルミは交互にしゃべり続け常に みっつかよっつの会話が並行して進んでいた 半被姿の店員がフグのてっさを運んで来た時だけ 二人のおしゃべりはやんだ 綺麗な模様のお皿に乗っているフグの刺身は お皿の柄が透けて見えるほど芸術的に薄く切られていた 「うちの会社で銀のアストンマーティンと言ったら 社長の車ですよね? 」 秘書課サポートチームで 杏奈の後輩のクルミがまだ出来上がっていない フグ鍋をマジマジと見ながら言った
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