chapter 6 太陽と風に抱かれて

2/31
前へ
/383ページ
次へ
まっしろな砂浜に縁取られた島の湾が近づくと 山景色はいっそう緑豊かになった 段々畑に連なるその最長奥に安部家の屋敷は 悠然と佇んでいた 埠頭で数台の車に乗って下船した杏奈と大和、 さらにディアマンテの社員数人は 船上にいるキクエたちに笑顔で手を振った 今はクイーン・マリーナ号の船尾部分が開いて この島に用事のある車がどんどん下船している まるで大きな船があんぐりと 口を開けているように見える ディアマンテの社員達はここから南にある 「ディアマンテ海洋科学基地」に向かうと聞いて 杏奈が自分の会社にそんな部署があるなんて 今まで知らなくて驚愕した 大和はある海洋科学に ディアマンテが力を入れていることを 杏奈に話してくれた 大和の運転でメルセデスベンツ4WDが 港を出て郊外に向かう間 彼は興味深いこの島の谷やランドマークを 指さしてはその名前や由来を 杏奈に教えてくれた 彼の本家に行く緊張でガチガチの杏奈を気遣って 島をドライブする間 彼はたわいない話題を提供してくれた そんな彼のおかげで 杏奈はだんだんリラックスしてきて 屋敷に着くころにはゆったりと助手席に座り フロントガラスから見える サファイヤ色の美しい海 真珠のように白い砂浜を眺める楽しみにふけった この島が・・・・・ 彼の育った島・・・ 彼が偽装婚をしてまで欲しがった島・・・ 彼の島・・・・ とうとう来たわ・・・・
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7627人が本棚に入れています
本棚に追加