chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「あれがうちの本家だよ」 丘のふもとの平原のかなたに 今は夕刻に宝石のように輝いている 茶色い大きな建物があった そこから少し下った所に街が見える やっと車がすれ違えるぐらいの幅の 山道を登って茶色い建物に近づくにつれて 当たりの景色はいっそう美しくなった 思ったよりも車道もきちんと舗装されており 道路は曲がりくねりながらに高くそびえる 茶色い屋敷に通じていた 丈高い鉄の門が大和の車が止まると自動で開いた 蔓バラが古い石壁からのぞき その門には半ば消えかけた安部家の紋章が刻まれていた 杏奈はその紋章をよく見ようと思ったが 車はそのまま通り過ぎ さらに多くのバラが咲き乱れている門庭を通った 「素晴らしいわ!ここの庭師はとても センスのあるお方だわ 」 「あとで藤本のじいさんに会わせてやるよ」 「おじいさんが管理されているの?」 大和はニヤリと笑った 「生きていればね」 大和は微笑んで4WDのベンツの ハンドルを操作した
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