chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「安部家の使用人をご紹介させていただいても よろしいでしょうか?奥様 みんな喜んでいます 」 家政婦長の後ろには家中の使用人が集まっていて 杏奈はお富と共に使用人達の列へと向かい 順にあいさつした 二言三言交わしながら相手の名前を頭に入れて行く 杏奈は安堵した よかったみんな好意的で歓迎してくれている それから大和に屋敷を案内された 「2階の客室が5つ 一階は応接室と執務室と主寝室を合わせて8つだ」 真ん中のらせん階段を上がりながら 天井から差し込むクリスタルの シャンデリアを見上げる 「・・・・まるで大昔にタイムスリップしたみたい・・ 絶対迷子になる自信があるわ・・・」 「作りは単純だよ」 大和は言った 「この屋敷は明治時代に建てられた 鹿鳴館だったんだ それを祖父が買い取ったんだよ 小さな港の悪ガキだった祖父は裸一貫で 貿易船の船乗りになって外国に渡った・・・・」 「そして祖父は外国の珍しいものを日本に 運んでくると儲かることを覚えた それは胡椒・・・蜂蜜から始まって、コーヒー 婦人物のスカート、革靴・・・ ありとあらゆるものを輸入した 」 二人は階段を上がって廊下を南方面にゆったり歩いた 南側の舞踏ホールを横切る大和が 舞踏ホールを親指で指す 「ここでは法に触れる物も夜な夜な売買された 」 大和が面白おかしく話す あまりの安部家の祖父の偉大さと歴史に圧倒され 杏奈は改めて自分とは生まれも育ちもまったく 違う男性の元に嫁いだのを自覚した 期間限定だけど・・・・ そして次の廊下の壁には安部家の 肖像画と写真が掛けられていた 「ご先祖様ね」 と大和に聞いた
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