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一息して大和に地元民がさっそく挨拶に来た
この島の当主が下船して島に入ったことは
おそらく島中の住民に知れ渡られている事だろう
そして地元民は大和に屋敷の周りの
街灯設置の件で相談があると言ってきたので
大和は出かけ
杏奈はゆっくりと荷ほどきをしていた
その際に杏奈はお富さんに足りなくなった
ハンガーを貰いに屋敷の厨房へ行った
そこにいたお富さんが料理長の健三さんと
呼ばれる人を紹介してくれた
彼は不愛想で無口だが今夜の献立の一つ
茶碗蒸しを味見させてくれた
それを一口食べて途端に杏奈は
不愛想な健三さんを好きになった
お富さんはひそひそ声で杏奈に耳打ちした
「無口でうぬぼれ屋さんですが
腕前は確かですよ
大旦那様が一流料亭から引き抜いたんです」
思わず杏奈はクスクス笑った
「私は大旦那様が海運事業を始められ
この屋敷を購入された頃にここにやってきました」
お富さんが美しい庭の物干しに大量に干してある
タオルを次々と洗濯籠に入れながら語る
風が心地よく吹き良い香りのする
洗濯物がこいのぼりのように風にはためく
「それはどれぐらい前?」
杏奈もお富さんを手伝って洗濯物をたたむ
「もう・・・
40年ほど前になりますでしょうか・・・
まぁ!奥様はそんなことしなくても
よろしいんですよ 」
タオルを畳む杏奈を見てお富が仰天する
「私は一般庶民よ、こんなことなんでもないわ」
家政婦長は当時を懐かしむかのように
目を細めた
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