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「主任!今日の社長のご予定は?」
杏奈が丁寧にアクを救ってカス取りの壺に入れる
そして三人前のとんすいにフグの身と野菜を均等に
分けながらすました声で言う
「佐奈が見たという時間帯ではたしかにその車は社長の
「アストンマーティンDB11」だと思うわ
調査すると日本であれに乗っているのは
うちの社長以外はほんの数人よ
しかも日本仕様の右ハンドルは最も貴重で
価格は2千万円代中古の一軒家ぐらいは
余裕で買えるお値段よただし飛ばないけどね 」
杏奈は上品にふぐ刺しを二枚挟んで
ポン酢をつけて口に運んだ
う~んと目を閉じててっさの旨さを噛みしめる
こんな所はめったにこれないけど
奮発してよかったと思う瞬間だ
「さっすが!社長秘書!なんでもご存じね!」
「当たり前でしょう!」
ある日の夕方高校生の佐奈が
ワールドトレードセンターに買い物に来ているから
晩御飯をご馳走してほしいと連絡を入れて来た
いかにも業務終了時間に合わせて
電話をかけてくる所など
末っ子らしく天真爛漫でお姉ちゃんを頼って
甘えるのが得意な佐奈だと思って杏奈は笑った
そこで杏奈は後輩のくるみも誘って
会社の近くにある
今が旬の店フグ屋(源平)に来ていた
ここは社長に紹介した3階の高級VIP個室の他に
2階1階はもっとカジュアルな一般客にも
コース料理を提供しているお店で
地元にも人気があった
佐奈は初めて生で見たディアマンテ海運の海運王に
ティーンエイジャーらしい熱狂ぶりを見せた
「アストンマーティンが走り去った時に
運転席をチラリと見たけど
お姉ちゃんの会社の社長って
すっごくイケメンじゃない?
なんかエキゾチックで素敵な横顔をしてたわ
なんだか彼の事好きになっちゃった」
佐奈がうっとりとして言った
「最近ではしかめっ面をエキゾチックって言うのね 」
杏奈がまぜかえす
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