chapter 1 血の繋がり

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「主任!今日の社長のご予定は?」 杏奈が丁寧にアクを救ってカス取りの壺に入れる そして三人前のとんすいにフグの身と野菜を均等に 分けながらすました声で言う 「佐奈が見たという時間帯ではたしかにその車は社長の 「アストンマーティンDB11」だと思うわ 調査すると日本であれに乗っているのは うちの社長以外はほんの数人よ しかも日本仕様の右ハンドルは最も貴重で 価格は2千万円代中古の一軒家ぐらいは 余裕で買えるお値段よただし飛ばないけどね 」 杏奈は上品にふぐ刺しを二枚挟んで ポン酢をつけて口に運んだ う~んと目を閉じててっさの旨さを噛みしめる こんな所はめったにこれないけど 奮発してよかったと思う瞬間だ 「さっすが!社長秘書!なんでもご存じね!」 「当たり前でしょう!」 ある日の夕方高校生の佐奈が ワールドトレードセンターに買い物に来ているから 晩御飯をご馳走してほしいと連絡を入れて来た いかにも業務終了時間に合わせて 電話をかけてくる所など 末っ子らしく天真爛漫でお姉ちゃんを頼って 甘えるのが得意な佐奈だと思って杏奈は笑った そこで杏奈は後輩のくるみも誘って 会社の近くにある 今が旬の店フグ屋(源平)に来ていた ここは社長に紹介した3階の高級VIP個室の他に 2階1階はもっとカジュアルな一般客にも コース料理を提供しているお店で 地元にも人気があった 佐奈は初めて生で見たディアマンテ海運の海運王に ティーンエイジャーらしい熱狂ぶりを見せた 「アストンマーティンが走り去った時に 運転席をチラリと見たけど お姉ちゃんの会社の社長って すっごくイケメンじゃない? なんかエキゾチックで素敵な横顔をしてたわ なんだか彼の事好きになっちゃった」 佐奈がうっとりとして言った 「最近ではしかめっ面をエキゾチックって言うのね 」 杏奈がまぜかえす
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