chapter 6 太陽と風に抱かれて

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彼はその人にどんな仕打ちをされたのだろう? 彼があれほど女性にクールになった 原因は何かしら・・・ 杏奈は気になってしかたがなかった 以前ディアマンテで働いている時は 彼は生まれながらに冷酷な人だと思っていたけれど 今では決してそうではないと確信している ゲイではないにしてもあれほど徹底した 女嫌いになってしまったのですもの きっとよほど酷い打撃を受けたのかもしれない 杏奈は正人に捨てられた事をオフィスの中の エレベーターで彼に告白した時の事を思い出していた その答えに彼はこう言った 「男なんて一途なものだよ いつだって心変わりをするのは女の方だ・・・」 そしてかつてのその女性こそが 女というものは高価な贈り物を欲しがる貧欲な 生き物だと彼に信じ込ませたのだろうか そしてすぐに心変わりをする生き物だと   いつしかあれこれとふりかえり 偽装結婚に気がすすまなかった自分が フェイクの夫をもっと知りたいと 思うようになっていた 彼はどんなことを思い どんなことで傷ついたのだろう 愛し、愛されたいと願う事は男女平等世の人が 皆願う事で もちろんすべてが思い通りに なっているとはそれこそ思えないが 自分の身近にいる人がやはり愛で傷ついていると 慰めてやりたいと心から思った 愛を失うという事は 自分が今まで信じてきたものを根底から 破壊されるほどの威力があるからだ 彼は杏奈にもう一度人を・・・・・ 男性を信じてみようと思わせてくれた人だ たとえそれが男女の愛ではなく友情だとしても 人を信頼するという心地良さを教えてくれた人 微力ながら杏奈も彼に対してそんな 存在になれたら良いなと心から思った
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