chapter 6 太陽と風に抱かれて

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相手の方から何か問題があったと言っては 大和の才覚をあてにして 近づいてくることも珍しくなく そういう者達は何時であろうとおかまいなしに 彼を訪ねてくるので 来客は1日と途切れることは無い そうした様々な雑務から解放された時間には 「メタンハイドレードの研究所」にいそいそと 向かい研究生や従業員の指導にかまけるのだ いくらフェイクの夫とはいえ・・・ 杏奈は仕事に忙殺され 朝から深夜まで業務に追われている彼を見て 体の事を思えば決して望ましくないと心配していた 大切な人がそこまで働きづめだったら・・・・ 少しは息抜きして休んでほしいと思うだろう ううん・・・ 大切な友達でもそうだ そしてある日杏奈はとうとう彼の体を 気遣う気持ちにあがらえなくなった お互いプライベートには干渉しないという 偽装婚の契約を破ってしまうかもしれないけど 杏奈はいろいろと計画を立てていた まずは彼に三食キチンと食事をしてもらいたい その日の午後思いがけず彼は杏奈の元に帰って来た 彼は朝からずっと消防団の地元民と共に 研究所の消火設備や安全対策の点検作業に あたっていた 万が一研究所内で火災が発生した場合に備え 避難誘導訓練や梯子の点検などをしていたらしく 住まいに戻って来た大和を見るなり杏奈は彼が とりわけ苦労の多い一日だったことがわかった 彼は上着を肩にかけ 髪はボサボサで心なしかヨレヨレの感じだった 頬には煤がついて汚れていた
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