chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「昼食会はどうだった?」 彼は杏奈にたずねた この日は杏奈は地元の有権者達がバザーを 毎年開催しているという裕福な 既婚婦人の集まりに招かれていた 杏奈は微笑んで言った 「おかげさまでとても楽しかったわ みなさん良い人ばかりで でも・・・ キチンとした慈善団体にすることに こだわりが強すぎる気がしたけど・・・」 杏奈は思い出して思わず笑った 「だって・・・・ 私なら10分で決められる問題も 慈善団体の話し合いになると1か月はかかりそう」 大和は笑った 「君はわが社の優秀な秘書だったからな 効率性を高めるために団体を設立する わけではないだろう、目的は暇つぶしだよ」 彼をしげしげと見つめていた 杏奈は目を丸くした 「それよりも・・・ その汚れは一体どうなさったの?」   彼の純白のシャツは煤だらけだった よく見ると両手は煤で汚れ 顎や頬にも煤が付いている 「避難梯子の点検をしてたんだ」 「まさかご自分で試されたの? 誰かに指示するとかではなくて?」 彼が顔をしかめて言った 「自分で試してもいない設備を他の従業員 に使わせるわけにはいかないだろう」 「こちらにいらして」 大和は時計を見て顔をしかめた 「悪いがゆっくりしてる暇はないんだ あと10分で研究所に戻らないと・・・ 午後からの点検が・・・  」 「来て」 「・・・・・・ 」 大和は杏奈に手を引かれるまま 洗面所に連れて行かれた
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