chapter 6 太陽と風に抱かれて

19/31
前へ
/383ページ
次へ
多分彼が欲していた睡眠をほんの少しだけでも 誰にも奪われないようにしてあげたかった 平穏な数分間が過ぎても 静寂を破るものは何もなかった 彼の生き方を見ているとまるでこの世と戦い 世界を征服するつもりなのかと思えてくる 今までもディアマンテの業績を見ても 彼はすでに多くの実績を上げて来たにもかかわらず 当の本人はその実績にまるで満足せず 喜びさえ感じていないような気がする 今の彼を見ているとまるで死に急いで戦場で 戦っている戦士のように思える そんな彼が平穏を手に入れる日は来るのだろうか いつか愛する人と子供をもうけて 心の安らぎを見出し人生を楽しむことは あるのだろうかと杏奈は思った 30分が経った― さすがに他の業務に差し支えが出るかもしれないと 思い杏奈は軽く大和を揺すって起こした 「・・・・なんだか・・・ スッキりしたぞ・・・   」 彼は目を輝かせ時計を見て飛び起きた ほんの束の間だけど杏奈の言う事を聞いて 休んでくれた大和に嬉しくなった 「30分ほどでしたら この後の業務に差し支えがないでしょう? あなたはもっと息抜きが必要よ――キャッ! 」 突然大和が杏奈の手を引っ張り自分の 膝の上に乗せた 「どんな息抜きがいいと思う?」 突然膝に乗せられて問いかけの意味を察した 杏奈は真っ赤になって 大和の目を見た 顔と顔があまりにも近い 彼の熱い瞳のきらめきに息も出来ないぐらいだ 彼の両手は杏奈の腰をガッシリ掴んでる 狼狽する彼女を見て彼の目は愉快そうに 輝いている
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7627人が本棚に入れています
本棚に追加