chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「おはようございます!あなた 朝食の用意は出来ていますよ 」 杏奈はみずみずしい笑顔をたたえ きびきびと立ち働いている 花柄の白いエプロンがほっそりとした体の ラインを際立たせている 背が低い女性の特徴で胴が短くて可愛らしい 艶めく茶色い髪はおでこの所から編み込んで 後ろでまとめている 食堂の戸口にあらわれた大和に気づいて ほほ笑む杏奈は人懐こい子犬を思わせる 朝日に照らされ なぜか目も眩むほどの可愛らしさに 大和は下半身が疼くのを覚えた 「すぐに用意しますからね~」 「いや、けっこう」 大和は反射的に答えていた 「コーヒーだけもらえれば・・・・ 申し訳ないが 朝食は食べない主義で・・・ 朝はコーヒーだけ飲むのがもう何年も日課で――」 コンッ・・・・ コン? 杏奈に目の前に置かれた木製の茶色いお椀を見て 大和は途端に口ごもった お椀には黄金色の味噌汁の中に 灰色の貝殻が見え 中央に小刻みのネギがふりかけられている 「――あさりかっっ!!」 思わず大和は口走った 実を言えばあさりの味噌汁は大和の大好物だった コンッ ←だし巻き卵(大根おろし付き) コンッ← ほうれん草の白和え コンッ← アジの干物焼き(炭火) コンッ← 切り干し大根とひじきの二種盛り 大和の目の前にランチョンマットが置かれ 綺麗な扇型に次々と大和の好物を並べられる そして極めつけ杏奈が大和の横に来て 藁作りの輪っかの形の鍋敷きをそっと置き その上に小さな黒い土鍋を置いた 「・・・?それはなんだ?」 大和が聞くと 杏奈はニッコリと笑って大和が凝視している タイミングで蓋を開けた 覗き込むと炊き立ての白飯の 湯気が大和の顔を襲った まだくつくつと音を立てている 真珠の様な白飯が大和の目に飛び込んできた
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