chapter 6 太陽と風に抱かれて

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しかし大和はそんな自分の反応に苛立ち 箸を置くとすっと立ち上がって 無表情に杏奈を見つめた 「もう出かけなければ 朝食をありがとう 」 杏奈はテイクアウト用のカップに入れて ストローを刺したアイスコーヒーを 大和に手渡した 可愛いウサギが大和の顔を覗き込む 「お弁当を作ってお昼に 研究所に届けてもよろしいですか?」   「駄目だ!研究所はとても危険だし 今日も火災訓練で昼メシなんか 食ってる時間がないんだ」 大和は首を振りながら 丸いおでこを出している杏奈の顔に魅了されていた 土鍋の湯気のせいか 頬がピンク色に染まっている 大和は彼女に口づけ味わいたい衝動にかられたので つい怒ったような口調になってしまった 「そうですか・・・・ でも・・・食事はなるべくお召し上がりに なってくださいね・・・」 誰かにこんな風に心配して もらえるのは何年ぶりだろう・・・ 少しぐらいなら・・・ 自分が迎えに行けば 杏奈が弁当を持ってきてもいいかもしれない・・・ それに研究所から離れた丘の あそこで食えば安全だし・・・ と思ったそばから 大和は動揺している自分に苛立った けれども甘い彼女の心地よい存在に 酔いたい気持ちは抑えようとしても抑えられない 大和は短く頷き 用心深い目つきで杏奈を一瞥してから食堂を出て行った
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