chapter 6 太陽と風に抱かれて

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・・・・・・ 杏奈の住む島とキクエの工房がある島は 二年前に大橋が開通したおかげで 車で30分の程度の所にあり ある日 約束通り杏奈はキクエの住む工房に 訪ねていくことにした キクエの工房がある島は歴史の古い街だった ちょっとした観光地なのか道路の舗装は進んでいて それと対象に古代や歴史の教科書に載っているような 遺跡があちこちに飾られていた そんな昔の偉人の空気が古い建物に残っている中 メイン通りには近代的な小さな店や カフェバーと軒を連ねて 食べ物や工芸品の屋台が並び 観光客でにぎわっていた 「それでは奥様4時にお迎えにあがります」 「清水さんありがとう」 赤のカットソーに白のサブリナパンツ ポニーテールの杏奈はキクエが迎えによこした 運転手の清水に挨拶をし キクエの待つ屋敷へ向かった 「杏奈!いらっしゃい!」 キクエはサッと挨拶の抱擁を示した それに心地よく杏奈も応じた 顔は互いに反対を向き 体だけを寄せる抱擁は セレブの挨拶だとキクエに教わっていた 「お招きありがとう! キクエさんとっても楽しみにしていたの」 杏奈は新しい家政婦の「久美子」が 焼いた自家製の黒糖パンと朝採れたてのレモンと 自家製の蜂蜜の手土産をキクエに渡した 久美子はいかにも「久美子」と言う顔をした女性だった 若くして離婚しただけに少し人見知りが激しく 何にでも自信が無さげだったが 杏奈と少し話をしたたけですぐに打ち解けた 顔立ちは面長で笑うと鼻の周りのソバカスが広がった 髪はいつも三つ編みにして 彼女も島の住民の特徴を備えていて 初めは人見知りをするが一度心を許して うちとけた後はとても愛嬌がある女性だった その久美子が作る黒糖パンは絶品で 杏奈が商品に出来ると褒めると 毎朝焼いてくるようになった
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