chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「右の階段から工房に上がって」 とキクエが先に大きな階段をあがり 杏奈が後に続いた 「ここから見る景色にインスピレーションをもらうの 居心地が良いアトリエでしょ」 キクエが微笑んで言った とても面白い所だった さまざまな形の貴金属や道具 それに出来上がった作品を陳列している大きな ショーケースを目にして杏奈はとても感動した そして工房の隅には二十代半ばの 男性二人が複雑な金属を加工していた 「私の弟子よ」 キクエは言った 特殊な工具を扱う慣れた手つきは素晴らしくて 長い時間杏奈はアクセサリーが出来上がる 工程をうっとりと観察していた エナメルがけした花のブローチとピン 美しいペンダント さまざまな形で光輝いているファッションリング どれも一目見たら欲しくなるものばかりだった 「あなたには才能があるわ」 ショーケースを覗きながら 杏奈は目を輝かせてキクエに心からの賛辞を送った そしてエナメルのプルメリアの花に 小さな宝石が付いているネックレスと ブレスレット、ピアスのセットにことさら目を引かれた 淡いピンクとクリーム色のコントラストが素敵な 非の打ちどころがない美しさだ 杏奈はこのセットを購入することに決めた あまりに気に入ったので さらにこのセットで色違いを作ってほしいと キクエに頼み込むほどの熱の入れようだった
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