chapter 6 太陽と風に抱かれて

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「島の暮らしはどう?」 キクエがシャンパンを片手に聞いた 「今はとても充実しているわ キクエさんの紹介してくれた 慈善団体の方も皆さん良い人ばかり」 「上流社交界では海運王の妻のあなたと 仲良くなりたい人が涎を垂らして 連なって待ちかまえているわ でもお付き合いは慎重にね 大丈夫!私がどの人と付き合えばいいか 全部フィルターにかけてあげる 」 「本当に心強いわ」 二人はシャンパングラスで乾杯した さらにそこからホノカの大学の研究院の 友人男子学生二人組が椅子を持ってきて テーブルに加わったものだから キクエ、杏奈、ホノカの他4人の青年達と 海沿いレストランの小さなテラス席は キクエ達の団体で一杯になった ホノカをはじめみんな気さくでジーンズにTシャツという格好で魅力的な青年達だった 海風が吹いて大きな白いパラソルが太陽を 遮ってくれるのでとても気持ちが良い 皆は食後のデザートとコーヒーを楽しみながら おしゃべりに花を咲かせた 「つまりあなたはあの海運王を 恋の網で捕らえたというわけですね」 一人の青年がおどけて言った 「最初のデートは? どれぐらい付き合って結婚になったんですか?」 付き合い? 杏奈は目が点になった 付き合うも何もいきなり偽装婚の取引きを 持ち出されて翌日契約をした杏奈にとって あらためて思えばこの青年達が夢に見ているような ロマンスなど二人の間には何もないのだ 当たり前だよね・・・・ 偽装婚だから・・・ それに彼の心を掴むなんてもってのほかだ 「あら!噂をすれば!よ」 キクエがなんとテラスの階段を上がってくる 大和に手を振った 「さっきあなたがアクセサリーを デザインしている時に彼から連絡があったのよ あなたがちゃんと私の工房に着いているか 心配していたみたいだから ここでランチにするって言っておいたの」 近づいてくる彼を見て杏奈の鼓動が早くなった 彼の膝に強引に乗せられた時はとても驚いたが あれから彼は普通の態度に戻ったので 杏奈は安心した
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