chapter7 愛が生まれた日

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ある日の午後久美子が籠いっぱいに 茶色の卵を厨房に持って来た 「ねぇちょっと見て!いつもの山上の農場で 買った物なんだけど あそこ、烏骨鶏の雛を入れたみたいよ」 茶色の卵に混ざって小さい薄い黄緑色の卵が 二個乗っていた 「わぁ!綺麗だな!中身も黄緑か?」 庭師の秀樹が黒糖パンをほおばりながら言った 「なぁ!健さんうちでも鶏を飼おうよ」 「駄目だ」 安部家の専属料理長の健三が 背中を向けたまま二人に言う 「卵代が浮くじゃない」 「鶏は泣き声がうるさいし匂いもする それに鶏小屋まで作ったら 卵代よりはるかに高くつくじゃないか」 健三が大きなガーゼに出汁を裏こししながら言う カツオの良い匂いが厨房中に漂う 「一羽でいいわよ」  秀樹が言う 「一羽じゃ寂しくてかわいそうじゃないか 二羽がいいな! 名前は「ゆでたまご」と「めだまやき」に決まりだ!」 「身も蓋もねぇ・・・・」 ブツブツ健三が文句を言っているが そんなことはお構いなしという具合に久美子と 秀樹が厨房のテーブルに座り 黒糖パンをほおばりながら おしゃべりに花をさかす
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