chapter7 愛が生まれた日

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背が高く身のこなしがアスリートのように優雅な彼 最近ではポロシャツに半ズボンと 黒のクロックスといった カジュアルな服装をしているが 先日キクエの工房であったひょろひょろと痩せている 青年達と比べれば同じ格好をしていても 筋肉質の体を上手く隠しているとは思えない 「招待を受けないのならその招待状は 捨てたらいいじゃないか」 そう言われて杏奈が便せんから目線を大和に向ける 彼が杏奈の前のテーブルにかがみ込み メモ帳か何かをマジマジと見ている 手首に着けたシルバーのロレックスが光を反射した 「お断りするからこそ欠席のその旨を 手書きのお手紙で書くんですよ  」 杏奈がペンにインクを浸しすばらしい飾り文字で 礼文を書いているのを大和が感心して見つめる さすがは元優秀な秘書だ 「つまりは断りの手紙を送るのは 今後付き合いたくないということだな」 「正確に言うと一応上流社交界のご意見番達で わざわざ会わなくても手紙をやり取りするぐらいの 付き合いは深めておくことはむしろ害があるどころか 有益であると判断した人達です 」 大和はそのあいまいさに思わず 腹を抱えて大声で笑った 「たとえば女性がよくやる なんとも思っていない男から告白されて (お友達でいましょう)ってヤツか?」 杏奈も楽しそうに書き仕事をしながら 大和の相手をする 今は筆ペンでのし紙に美しい文字で大和の名前を 書いてなにやら贈り物に張り付けている 「ええ・・・ きっぱり断って無下にしてしまって 後で恨まれるのが怖いので 「お友達」という防御策を最初に立てるのですよ そしたら男性は拒絶されたわけではないから 交際を断ってからも好意を抱いてくれるでしょう? 女性は本能でむやみに敵を作りたくない生き物ですから」 「巧妙だな」 くっくっくと大和が笑いをかみ殺す
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