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快晴の朝である
大和は巨大な海洋採水装置へ続くタラップの上に立って
双眼鏡で今は沖をじっと見つめていた
海風が心地よく吹き
海には小さな三角波が立っていた
大和の覗く二つの丸くて黒い縁の双眼鏡の向こうには
沖にグリーンピース色の船体に数人の中国人が
見えていた
「あの船は先週よりも900メートルの距離まで
近づいてきているぞ
海上保安庁に連絡をいれよう!」
黄色い安全ヘルメットをかぶった
採水現場監督が不思議そうに大和に聞く
「しかし・・・
あの船は中国のただの漁船ではないでしょうか?
まだ漁業海域も守っていますし・・」
「よく見て見ろ
全員銃を持っている 」
そう言って同じく安全ヘルメットをかぶった大和が
現場監督に双眼鏡を渡した
いぶかし気に監督は双眼鏡で沖にいる
中国漁船をのぞき見する
「・・・まさか・・・・ 」
一気に現場監督が厳めしい表情になる
たっぷり間を置いた所で大和が言った
「あれは漁船なんかじゃないよ、軍艦だ 」
浜辺へと続く鉄製のタラップを大股に歩く大和に
慌てて監督と技師達が追いかけてくる
「どうやら奴らも僕達と目的は同じみたいだな
メタンハイドレードを狙っている」
燃料補給の準備に忙しくしている作業員を横目に
何メートルもある海水吸い上げ装置付きのホースの
唸り音があたりに響いているので
大声を出さないと話が出来ない
「昨日二号機から採掘された
水質調査隊からのデータは以上の通りです 」
そう言って差し出されたクリップボードの
報告書に大和は素早く目を通した
「この濃度だと到底メタンハイドレードの燃料化
は無理だ 」
「あと2キロ掘ってみます
水域計算によるとちょうどこの区域で
海流の流れが計算と一致しますので」
「どっちにしろこれでヤツらもこの島の
海域に豊富にあるメタンハイドレードを
狙っていることが明らかになったな 」
「・・・・私の友人に海上自衛隊に
知り合いがいます
さっそく報告しましょう」
「いや・・・それはちょっと待ってくれ
事を大げさに荒げたくはない 」
そうなのだ・・・・
この島は日本でも唯一海洋資源が豊富で
大和が偽装婚をしてまで相続したのは
この島の資源をめぐって近隣諸国で
争いが勃発しようとしていたからだ
そしてそれは杏奈には言っていないが
祖父のもう一つの遺言にもあったことだ
メタンハイドレードを燃料化することは
先代の大和の祖父(昭三)が望んでいた事だ
今ではそれが大和の生きがいで
祖父の願いなのか大和の願いなのか
その境界線が分からなくなっていた
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