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彼は想像していたよりもずっとたくましかった
胸はみごとに鍛え上げられ
分厚く盛り上がった胸筋の先には
茶色い乳首が飾られている
腹筋はくっきりと六つに割れていて
板チョコ―トのようだ
これほどまでに男性的な・・・
圧倒的な肉体を見るのは始めてだ
気を抜くと杏奈も久美子も頬が赤くなる
しかし右手はゴム人形のようにだらんと垂れ
右肩は恐ろしい程腫れている
赤紫に変色し・・・
胸のとこまで変色が進んでいる
今は彼は痛みで朦朧としているようだ
杏奈と久美子が二人がかりで
大和の擦り傷や血を拭きとって
杏奈は大和の上に身をかがめ枕の位置を直した
もしも落ちて来た梯子がもう少しずれてたら・・・
心臓や頭に当たっていたら・・・
そう思った瞬間
杏奈は恐れと怒りがないまぜになった気持ちになり
そんな自分に驚いた
「お医者様がいらっしゃるまで
少し寒いかもしれませんがこのままでいてくださいね
診察が終わったら
着替えを手伝いましょう 」
「一日、二日すればすぐ直る」
「何を馬鹿なことをおっしゃってるの?
ちゃんと完治するまで
絶対にベッドからは出しませんからね!
そのためならどんなことだってしますから!」
「どんなことって?・・・・ 」
杏奈は純粋な気持ちで言ったのに
大和はギラギラ目を輝かせている
どうやら負傷したこの美しい獣は
今は性的な考えから離れられない様だ
杏奈が無言で警告するように
睨みつけると彼は静かになったが
笑いをかみ殺すかのように口元をひくつかせている
急に横で久美子が頬を染め
意味もなくタオル類をせっせと畳み直す
そこへドクター佐原が到着した
彼はずんぐりした白髪まじりの小さなドクターで
丸い眼鏡の奥の瞳はやけに鋭そうだった
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