chapter7 愛が生まれた日

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彼は想像していたよりもずっとたくましかった 胸はみごとに鍛え上げられ 分厚く盛り上がった胸筋の先には 茶色い乳首が飾られている 腹筋はくっきりと六つに割れていて 板チョコ―トのようだ これほどまでに男性的な・・・ 圧倒的な肉体を見るのは始めてだ 気を抜くと杏奈も久美子も頬が赤くなる しかし右手はゴム人形のようにだらんと垂れ 右肩は恐ろしい程腫れている 赤紫に変色し・・・ 胸のとこまで変色が進んでいる 今は彼は痛みで朦朧としているようだ 杏奈と久美子が二人がかりで 大和の擦り傷や血を拭きとって 杏奈は大和の上に身をかがめ枕の位置を直した もしも落ちて来た梯子がもう少しずれてたら・・・ 心臓や頭に当たっていたら・・・ そう思った瞬間 杏奈は恐れと怒りがないまぜになった気持ちになり そんな自分に驚いた 「お医者様がいらっしゃるまで 少し寒いかもしれませんがこのままでいてくださいね 診察が終わったら 着替えを手伝いましょう 」 「一日、二日すればすぐ直る」 「何を馬鹿なことをおっしゃってるの? ちゃんと完治するまで 絶対にベッドからは出しませんからね! そのためならどんなことだってしますから!」    「どんなことって?・・・・ 」 杏奈は純粋な気持ちで言ったのに 大和はギラギラ目を輝かせている どうやら負傷したこの美しい獣は 今は性的な考えから離れられない様だ 杏奈が無言で警告するように 睨みつけると彼は静かになったが 笑いをかみ殺すかのように口元をひくつかせている 急に横で久美子が頬を染め 意味もなくタオル類をせっせと畳み直す そこへドクター佐原が到着した 彼はずんぐりした白髪まじりの小さなドクターで 丸い眼鏡の奥の瞳はやけに鋭そうだった
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