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お富が頷き
慌てて壁と一体となった戸棚から
ジャックダニエルを持ってきて
ストレートグラスに 満々と注ぎ
大和の口元に持って行った
大和は一気に二杯ごくごく飲みほした
あまりにも原始的な治療法に杏奈はあっけに取られた
こんな大怪我をした怪我人にお酒を飲ませるなんて
都会の病院では決していない治療だ
「お前さんが弱っとる姿を見るのは気分が
良いのぉ~」
ドクター佐原はホッホッホッと笑った
「・・・・すげぇ痛かったぞ
くそじじぃ・・・ 」
今では杏奈もなんとなくわかってきた
相変わらず憎まれ口をたたいているが
この二人はお互いに心から好意を抱いている
大和はふてくされて項垂れているが
高い頬骨のあたりが紅潮し
黒くて長いまつ毛が汗か涙かわからないが濡れていた
首筋や鎖骨まで汗がにじんでいる
やはり相当痛むのだろう
杏奈はオロオロしながらただ見ていることしか
出来なかった
そしてまたドクター佐原は雰囲気を変えて
杏奈達を睨みつけた
「これから数日にわたって
肩の痛みと腫れは増すだろう」
ドクター佐原は続けた
「じゃが不快感があっても普通に腕を使うように
でないと筋肉が弱ってしまうからの
今日一日は三角帯で支えて
激しく動かさないように 」
小柄なわりに彼は力が強く
大和が身を起こして座るのを手伝った後
慣れた手つきで首から腕を三角帯で包み端を結んだ
そしてまた杏奈をじっと見据えた
「数日間は痛みで寝付けぬかもしれんな
消炎剤と寝つきを良くする薬を処方するから
後で病院に取りに来なさい
一日一回、就寝時のみでそれより多くは飲まさないように」
「あ・・・ありがとうございます」
「それではワシはこれで 」
「ありがとうございます!先生
さっ!よかったら厨房で柚茶でもいかがですか?」
お富が涙をエプロンで拭きながら
ドクター佐原を厨房へ案内する
「呼ばれよかの!お富さんの柚茶は絶品じゃ」
ホッホッホッとドクター佐原は笑いながら
お富と部屋を出て行った
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