chapter7 愛が生まれた日

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彼女は大和の寝ているベッドにやってきて 大和のおでこに冷たい手を当てた 「・・・・佐原先生の言う通り 少し熱が出て来てますね・・・ 朝食を食べてから おしぼりで体を拭きましょう! さっぱりしますよ 」 それから杏奈は仕事に取り掛かり カーテンと窓・・ そして入り口にドアストッパーを挟み少し隙間を作り 部屋の風通しを良くした 「寒かったら言ってくださいね」 庭から咲き誇るバラの香りが ふんわりと漂ってきて その匂いを肺いっぱいに吸った なんだかそれだけで気分がよくなった ベッドに照らされている朝日をじっと見る まったく身動きが取れないのは 人生で初めてかもしれない じっとベッドにいるとあまりにも時間は怠惰に流れ 考えることがありすぎる 今大和は最後は寝たきりになった 祖父の事を思っていた 祖父もこんな感じでベットの上で長い一日を 過ごしていたのだろうか・・・・ しばらくすると杏奈が朝食のトレーを持って来た トレーに乗った茶碗蒸しと鍋焼きうどんは上手そうで 匂いを嗅いだけで口の中に唾が溢れた 杏奈が介助してくれたので 大和は茶碗蒸しとうどんを綺麗に平らげた それから彼女は洗面器に熱い湯を注ぎ 丹念におしぼりを三つ作った 懸命に平静を装っているが 男性と寝室に二人っきりでいることを ひどく意識していることは一目でわかる 大和の顔を拭いてくれた時は 心地良さにため息が出た しかし彼女は大和と目をいっさい合わせようとしない 「杏奈・・・・嫌なら無理に――」 「あなたのお世話がしたいの 嫌なんかじゃありません 」 「でも顔が真っ赤になってるよ」 可愛くてどうしてもからかう気持ちが止まらない 彼女はわざと鼻にしわを寄せて大和を睨むが それが余計可愛らしくなるのを本人はわかっていない 「私があなたなら 自分の手当をしてくれる人をそんな風に からかったりしませんね」 「ハイ・・・もう何も言いません」 大和は大人しく口をつぐんだ 杏奈の手が伸びてきて ほとんどはだけているパジャマのボタンを外した
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