chapter 1 血の繋がり

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放埓な父の時代は終わり 祖父の死後今は後継者の大和がしっかりと 祖父の会社を我がものとして担っている そして祖父の死後たった一人の孫大和が 祖父の遺産を相続するのは至極当然の事と 誰もが思っていた そして実際に祖父はそうしてくれた ――忌々しい遺言付きだったけれども 母は大和が5歳で癌で亡くなり 女性と金にだらしない父に苦しめられている祖父を見ながら育った大和が一度だけ真剣になった ある女性と別れてからは 米粒ほどの結婚願望も無く そしてそれが生前祖父と大和の口論の元だった   祖父は自分が死ぬ間際になって 大和がうんざりするほどの見合いを勧め 自分が気に入った女性と大和を結婚させようと していた しかし今考えれば大和にも 責められるべき点はあったかもしれない   大和の独身貴族を貫く姿勢は変わらず 勝手気ままな独身生活が気に入っていることを 祖父にも周りにもおおっぴらにしていたからだ 祖父は晩年は事業の経営を家族だけで 固めるという考えにとりつかれていた そして今38歳を迎えようとしている彼は 自分が未婚のままでは後継者もできない 大和はこのままでは跡継ぎを作らない可能性が 高いと祖父に信じ込ませてしまったのだ   「・・・・遺産相続を完璧なものにするためには 結婚しなければいけないという条件は 裁判で無効に出来るのではないかと言っていたのは どうなった?」 大和が指を口に当てながら弁護士に聞いた 弁護士が考え深げな表情で眼鏡を吊り上げた 「その点につきましては 私もいささかご同情申し上げます 大和様のお爺様の遺言には明確な指示があります これには遺産を相続するための第一条件とみなされました」 忌々しい・・・・ 祖父は今頃は墓の中でほくそ笑んでいるに違いない 弁護士がコホンと咳を一つ突く 「しかし私はこの遺言状の大切なことに気づきました お爺様の遺言状にはこう書かれています 自分が所有す会社「ディアマンテ海運国際株式会社」 の25%の株、邸宅やその他すべて 所有する財産を大和様が相続する条件は 「孫の大和様が結婚していることを示す証拠」 を決められた日に提出すべきと・・・・ 」 「その意味は?」 「ここには一生結婚を続けないといけないとは 書いていません 」 つまり結婚して遺産を受け継いだら 離婚すればよいのか・・・・
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