chapter 2 運命の向こう側

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「・・・・今・・・・何ていったの?」 暗い顔で唇をかむ正人に杏奈が 信じられない気持ちで問いかけた 正人が緊張した顔で言った 「婚約を・・・・解消したい」 杏奈は何も言い返せなかった なぜなら頭が真っ白になり何も考えられなかったからだ 「君は・・・・素晴らしい女性だよ・・・ ただ・・・だけど・・・ それだけではやっていけないって言うか・・・ いや・・・ 違う・・・・ 君は僕には出来過ぎなんだよ 理解してもらえるかどうかわからないけど 君といると・・・ 自分が無能な気がして僕は窮屈に思ってしまうんだ」 大阪港にある関西一大きな商業施設 ワールドトレードセンターの1階にある お洒落な噴水が中央にあるカフェテリア・・・・ 杏奈の会社の近くで二人がいつも待ち合わせる場所 吹き抜けの噴水の前のテーブル席は 開放感があり4階まで買い物客が見渡せる 二人がお気に入りの場所・・・・ しかし・・・ もしかしたら杏奈がお気に入りなだけで 正人が合わせてここにしてくれていただけかもしれない 杏奈はそんな事を思いながら正人の後ろの噴水から水が吹き出ている所を凝視していた 彼から顔をそむけていれば これ以上耳障りな言葉を聞かなくて済むとでも言う様に 「・・・・・ひどいヤツだと思ってくれていい ただ・・・・ 少し距離を置きたいっていうか・・」 杏奈は無意識のうちに紙おしぼりを力いっぱい 握りしめていた 「つまり・・・・ 私と別れたいってこと? 結婚式は3週間後なのよ?・・・」 何をどう考えればいいのかさっぱりわからない 今咄嗟に思いついたことは今朝結婚式の招待状を 印刷にあげるOKを式場に出したことだ 正人がボリボリ頭をかいた 彼が都合が悪くなったらする癖だ 「ほら! その言い方だよ・・・・ 僕はわかっていた・・・ 君は裏切られたと僕を責めるだろうね でも誰も悪くないんだ 君も悪くないし僕も悪くない 気持ちが変わることはよくあることじゃないか・・・」 杏奈は気が遠くなりそうだったが それでもじっと座っていた 婚約を解消して別れたいと言われて これほど驚くなんて・・・・ 彼の心が自分にないのなら何かもっと 以前に気づいてもよさそうなものだが これでは愚か者も良いところだ・・・   「愛してると言ってくれたじゃない・・・」 杏奈はこんなくだらない言葉しか言えない 自分に腹が立った これじゃ別れないでくれと すがっているように聞こえる
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