chapter 2 運命の向こう側

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今まで一緒に生きて来て二人の間に こんな沈黙は初めてだった 怒りに震える どんな風に話をするかずっと考えていたが いざとなると言葉が出てこない カンナが先に口を開いた 「なんて言えばいいか・・・ 本当に申し訳なく思っているわ・・」 申し訳ないですって? その言葉を聞いて怒りの感情にすがりついて 勇気を振り絞った 今こそ思ってきた胸の内をこの妹にぶつける時だ 「どうしてこんな事をしたのか説明して!」 「理由なんてないわ・・・ ただ・・・私達もう止められなかったの」 「たとえ感情は止められなくても 他にもやり方はあったはずよ」 「だから言ったでしょう? 申し訳ないと思っているって・・・・」 「幼いころからあなたが謝るたびに 私は許してきたわ 服やお金を盗られてもね! でも今度ばかりはひどすぎるわよ!カンナ! いったいいつからなの?あなた達?」 「いつからって―― 」 「体の関係を持った時の事を言ってるのよ!」 「二か月ぐらい前からかしら」 「・・・・二か月・・・・  」 杏奈は言葉を失った あまりのショックに 途端に後頭部にひきつるような頭痛が襲ってきた 彼にプロポーズされて慌しく結婚式場や 新居を忙しく探している頃だ・・・・ 今は陸に打ち上げられた魚のように呼吸が苦しい 「でも・・・・ それほど頻繁に会っていたわけじゃないわ」 慌ててカンナが取り繕った 「お互いなかなか忙しくて・・・」 「私の目を盗んでコソコソしなきゃいけないものね」 カンナが慌てて言い訳した 「彼・・・姉さんとの関係に疲れていたのよ 姉さんは私が泥棒猫のように寝取ったと 思っているかもしれないけど・・・」 「その通りよ」 「姉さん達はどっちみち上手く行かなかったわ」 「そうかしら? 先週も一緒にベッドで過ごしたわ 私にはすべてがうまくいってるように思えてたけど」 次はカンナがショックを受ける番だった 彼と肉体関係を持っていた時期が完全に被っている なんて男なんだろう 本当に言いたいことはスラスラ出てこなかった 辛らつな物の言い方は妹ほど得意ではなかった でも今この時を逃して実の妹を悪し様に言う タイミングは人生で無いような気がした そういう時もあるはずだ   カンナが黙り込んだのは 今でも自分が彼と体の関係を持っていると知って ショックを受けているようだった 「カンナ・・・・  あなたは先々の事を何も考えていない」 杏奈は言った
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