chapter 2 運命の向こう側

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「あの・・・・ハンバーガーは・・・・ 九千八百円もしていました・・・ 」 杏奈はどうしてもそれが頭から離れなかった 消費税を入れたら一万超え?・・・ 「いったい・・・・ どうやったらそんな値段がするハンバーガーが 作れるのでしょう?」 思わず杏奈はポツリと言った 彼はそんな杏奈の疑問が面白いと思ったらしく ニヤリと笑って言った 「聞いてみよう」 次に支配人が呼ばれ九千八百円のハンバーガーに ついての質問に答えさせられた ハンバーガーはどうやって作りこんな値段が つくほど特別な理由は何なのかと問われると 支配人は胸をはって材料にはすべて厳選された 素材を使用しておりますと答えた ハンバーグは宮崎産のハーブ牛をミンチに したもので、パンは国内産の米粉のホームメイドのパルメザンチーズ入り 北海道の提携している酪農家のホルモン剤を飲んでいない牛から作ったスモークド・モッツァレラ・チーズ 秋田産の水耕栽培のブロッコリーと菜の花を掛け合わせて栽培された「ハナッコリー」・・・ 枝に付けたまま光に当てて完熟させた滋賀県産の トマトなどと一緒にすべて無農薬で育てた 各地方の無農薬野菜などなど・・どーたらこーたら 「なんだか・・・・聞いてるだけで 日本一周した気分ですわ・・・ 旅費の節約にはなりますね  」 杏奈があきれ顔でそう言うとボスはそれが おかしかったのか突然大声で笑いだした 杏奈は目をパチクリさせた これまで人生で入った中で最高に高級なレストランで 自分は何故だか海運王と業界に恐れられている 彼を大笑いさせているのだ 杏奈はこれまで彼がこんな風に笑ったのを見たことがなかった その響きは雷鳴にも似ていた 支配人は気を利かせて下がって行った 「し・・・社長・・・・ 少し・・・声を落としてくださいませ・・ 周りに注目を浴びて恥ずかしいです」 杏奈は喘ぎながら笑っているボスに真っ赤になりながら必死に小声で訴えた そして優しい彼の雰囲気がこれまた意外だった そこには今までの癇癪持ちの海運王の姿はなかった   杏奈も思わずくすくす笑い出した
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