chapter 2 運命の向こう側

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「そうやって自分の大切な人を亡くすのって・・・ すごく辛いですよね 私も大好きだったお向かいにいた フラワーアレンジメントの師匠の公子おばさんを 癌で亡くした時は本当に悲しかっです・・・ といってもおばさんは化学療法は 受けなかったんですが 見つかった時はもう手遅れでした・・・・  ステージ4まで進んでいて 肺にまで転移していたんです おばさんは苦しい手術や治療で延命を図るより 短くてもいいから最後まで 自分らしく生きることを選びました おばさんには実の母親よりも 母親らしく接してもらって 亡くなってしばらくは何も手につかなくて・・・・ その時思いました ああ・・・・ これが悲しみと言うものなんだと・・・・」 今でも思い出したら悲しくなる いつも明るくて花を抱えたおばさん・・・ 杏奈に一生涯の友達・・・ 花と触れ合う事を教えてくれた人・・・・ 「その時君は何歳だった?」 「17歳です」 杏奈は彼に公子おばさんとの思い出を話した フラワーアレンジメントショップを お金をためて一緒に経営をしようと 二人で本気で計画を立てていた事 公子おばさんが亡くなって母の進める 女子短期大学に進み秘書課で学びながらも おばさんの抱えていた生徒を杏奈が しばらくは引き継いで教えていた事など そしてここ数日で正人と婚約を破棄したことなど あまりにもたくさんの細やかなことが 思い出されてつい話が長くなってしまった 彼は目じりにしわを寄せて じっと耳を傾けていてくれた さすがに妹が婚約者を盗んだとは言えなかったが 彼に突然別れを突き付けられたくだりでは 以外にも海運王は顔をしかめて怒ってくれた 「本当に長女って・・・・・ 損な役割ですよね・・・・ 私・・ ずっと自由で美人な妹が羨ましかったんです・・・ あと一番下の妹にも母は甘くて・・・ 」 海運王の意見は意外なものだった 「ご両親・・・・ 特に跡継ぎを産めなかったあなたのお母様は 行く行くはあなたに面倒を見てもらうために 自分好みに育てる必要があったのでしょう 親というものはそういう風に無意識に 子供に計算が働く生き物だからね」 杏奈はあまりにも的を得た彼の言葉に頭が 真っ白になった ずっと解けなかった数学の 問題の答えをいきなり先生から 答えられた気分だった 今までこれほど的確に自分の悩みに答えて くれた人はいただろうか ずっとがんじがらめに縛られていた鎖が パンッと外れた気分だった
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