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テラスから続く遊歩道を歩くと
堤防のすぐ先に海食崖を見渡せる灯台が見えた
堤防の下には美しく乾いた砂浜が
どこまでも広がっていた
今夜は風もなく寄せる波が静かに泡立っていた
ほぼまん丸な月の光を照り返して海面は神々しい
崖に沿って階段が取り付けられていて
美しい砂浜へ降りられるようになっていた
心地よい海風を浴びながら隣に
ゴージャスすぎる人を従えてゆっくりと歩く
堤防の不安定な地面に突き出た小石に杏奈が躓くと
彼が杏奈の腕を支えた
海運王はぎゅっと力強い腕で杏奈の
腰を抱きしめた
杏奈はあわてて弾けるように彼から一歩離れた
「すいません・・・」
「大丈夫?」
杏奈は彼からくるりと背を向けて
再び歩き出した
心臓は全力疾走したように早鐘を打っている
火照って赤くなっている頬は酔っているせいだと
どうか彼に思われますように
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