chapter 2 運命の向こう側

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夕べ二人で食事してから杏奈にとって彼という 人物も印象が今まで知っていた 傲慢で癇癪持ちの恐ろしい海運王ではなく まったくの別人になっていた 布団に入ってもなかなか寝付けず 何度も寝返りを打ち 彼の射る様な瞳・・・・ 微笑んでいるかのような口角の上がった口元 ワインを飲む美しい横顔や上下する喉仏など・・・ 次から次へと思い出されて 朝を迎える頃には体がうずき悶々とした まるでさんざん愛撫されていきなり 放りだされたような気分だった 夜が明け小鳥が窓をさえずるようになっても 杏奈はいかにも結婚を商談の一つとして 淡々と話を進める彼を思い出していた あんな冷血人間のような結婚の申し出を自分が 未練たらしくとても魅力的に感じている事にも驚いた 結婚して半年経ったら 今度は直ちに離婚だなんて・・・・ 冷血と言うよりおそろしい話だ こんなにも神聖な結婚というものを 侮辱した話は聞いたことがない 仕事としてこの結婚を承知できる女性が現れたら 私はきっと憐れに思うわ・・・・ 不思議に海運王のボスから 偽装結婚でもプロポーズされてから 正人の事を思い出してもあまり何も感じなくなっていた それは良い事だ、だが問題はカンナだ 妹との関係は切っても切れないからこそ苦しさは続く つまり自分のためにカンナを許さないと バックミラーに映る後続車のように 見た目ずっと近い距離にカンナがずっとついてまわる だけど自分は悪くないと思っている 相手をどうやって許せばいいのだろう
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