chapter 2 運命の向こう側

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「母さんは言ったのよ お父さんもお母さんもあなたには失望したって あなたの味方をするわけにはいかないとも伝えたわ ここはひとつキッパリと言っておかなければ あの子のためにはならないと思ってね」 母の意外な言葉に杏奈は振り向いて ここ数日で初めてマジマジと母親を見つめた てっきり両親はカンナの肩を持ち 杏奈には正人を諦めろと言うに決まっていると思っていた   「なによ・・・どうしてそんなに驚くの?」 母が眉をしかめた うろたえるあまり杏奈は笑ってしまった 「だって母さんと父さんはカンナが何をしようと これまで失望したことなんてないもの てっきりカンナのために身を引けと言われると思っていたわ」 「まさか! あなたと正人さんは3年間も交際して婚約まで していたのよ 結婚式の日取りもあの山の様な招待状も」 玄関の隅に結婚式場から届いた 招待状が入った段ボールが放り出されていた 途端に胸がくるしくなった しかし 母が本心から怒ってくれていることが 杏奈はまだ信じられなかった 「お母さんはいつだってカンナのすることは 何もいわなかったわ・・・ 良い事も悪い事も」 母は杏奈に申し訳ない顔した 「たしかにそうね・・・・ 私はあの子の好きにさせすぎたかもしれない カンナはあなたより手がかかる子だったのよ 何をしてもあなたほど優秀ではなかったし てんかんを患ってからというものの あの子は変わってしまったわ・・・・ 」 母は右頬を抑えてため息をついた 「いくら外見が美しくても 気まぐれで欲深くなった・・・ 」
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