chapter 2 運命の向こう側

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「それは母さんが甘やかせて育てたからよ 人としての基本を身に付けないといけない時期に 踏み外したのね」 母がムッとした 「何もそんなキツイ言い方をしなくても いいじゃない 」 杏奈はため息をついた 「私も悪かったのよ いくらてんかんを患ったからといって 何も言わなかったわ・・・・ もっと幼いころから取っ組み合いの喧嘩でもして お姉ちゃんのものを泥棒猫のように 盗んだり壊したりしたらただじゃすまないと 思い知らせてやればよかった・・・・ 普通の家庭の姉妹のように上下関係をきちんと 教えこんでいれば でも母さんがカンナをかばっていたから出来なかった うちの家族全員がカンナを甘やかして あんな人の心が分からない 無責任な大人にしてしまったのよ 」 「杏奈・・・・ 今週末温泉にでもいかない? お父さんと佐奈も誘って」 杏奈は微笑んで首を振った 「気持ちは嬉しいけどそんなもので気持ちは晴れないわ 余計に嫌な事を思い出しそう・・・ あの子は今回の事で私の人生の姉妹関係に ハッキリ亀裂を入れ込んだわ まるでコピー用紙を手でビリっと破るように平然とね! そしてあの子はそれをまったく悪いと思っていない 姉のものは自分のものと思っているのよ 自分が望めば男でも私が差し出すと思っているのよ」 「そうね・・・・私がいけないのよ・・・・ 母さんがあんな風に育ててしまったから」 「やめてよ!」 ついにこらえきれず杏奈の怒りが爆発した 「母さん!お願いだから 一度ぐらいカンナが悪いと認めてよ! 千回の言い訳を探すよりカンナが 私に酷い事をしたと言ってよ 今は何をいわれてもあの子を責める以外に思いつかないわ」 すると母が杏奈の両腕を持ってすがった 「あなたの辛い気持ちは十分わかるわ 母さんからもキツク言っておくから でもね・・・・杏奈・・・・  」 「聞きたくないわ」 「こんなこと言うのは早いかもしれないけど あなた達は姉妹なのよ・・・ そしてあなたは姫野家の大切な長女 私の大切なあなた達がいがみ合ってるなんて お母さん・・・・とても苦しいの・・・ いつか・・・・あの子が心から謝ってきたら どうか許してやってほしいの・・・ だって私たちは家族なんだから」 「そんなことを言われても 今は受け入れられないわ」 「何度も言うけど あなた達は実の血を分けた姉妹なのよ!」 「母さんはただ単に私とカンナが仲たがいを していたら自分の都合が悪いだけでしょ? 私は今後一切カンナと縁を切っても ちっとも困らないわ!  むしろその方が幸せになれるわ!」 「杏奈っ!」 「遅刻するから行ってきます! 」 杏奈は駆け足で家を出た
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