chapter 2 運命の向こう側

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・・・・・・・・・・ 朝の通勤の満員列車の中杏奈は はらわたが煮えくり返り もう当分家族の誰とも口を聞きたくなかった 耳にワイヤレスイヤホンをつっこみ ショパンの「革命エチュード」を大音量で聞いた 朝早くに家を出たので出勤時間までまだ時間が あった なので考え事をしたくて杏奈はわざと会社まで遠回りした   クラッシックを聞きながら ゆっくり歩いていると頭が良く働いてくれた   しょっちゅうカンナが 帰ってくるあの家にいてもいずれどこかで 鉢合わせするだろう・・・ それにこれ以上両親と堂々巡りの無駄な口論をして 神経をすり減らすのもごめんだった ショックと絶望でどうにかなってしまわないように 平静を保つのも限界が来ていた   自分がカンナを許せば何もかも 丸く収まるのだろうか・・・ でもそんなことは出来ない 自分を殺せと言っているようなものだ 許せ、許せない、許せ、許せない まるで負の無限ループに入ってるようだ とても苦しい・・・・ ここから抜け出せる 何かよい方策を見つける必要がある しかも早急に 正人、カンナ、自分の三人のうち二人が幸せに なるならひとりは傷つくのもやむを得ない 途端に涙が溢れそうになった その時でふとカバンに入っている昨日海運王から もらった「偽装結婚」の契約書に目が行った なぜか家に置いておけず カバンに入れて持ち歩いていた  
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