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生死の境をさまよう大病をしてから動物のように
育てられている妹は成績が悪くても
お友達の物を盗ったと学校の先生に呼び出しを
くらってもそれでも叱られることはなかった
そんな杏奈にとってお向かいの公子おばさんの
存在が救いになっていた
公子おばさんは週に一回自宅で
フラワーアレンジメントの教室を開いていた
おそらく母はご近所付き合いの義理でその教室に
通っていたのだろうけどフラワーアレンジメント
に夢中になったのは杏奈の方だった
毎回しつこく母の教室について行って
杏奈は許される限り母のそばで
熱心に講習を見学していた
ついに母が根負けして自分のかわりに
杏奈を教室に通わせてくれた時には本当に喜んだ
「フラワーアレンジメントの講師なんて
生活できるほど金は稼げないぞ
趣味程度ならいいけどな 」
と父は笑った
「お見合いの時の経歴になるからいいのよ」
と母は言った
しかし当時の杏奈は自分は花と話ができると
心の底から思い込んでいた
どの花瓶にどの花と一緒に生けたらいいか
勘でわかるのだ
相性の合わない花は自分に語りかけてくるし
杏奈が生けた花はとても美しくどの花よりも長く咲いた
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