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「無理です!
こんな高級なお寿司屋さんなんて入れません!」
杏奈はハイアットリージェンシーの6階の
看板すら無い美しいヒノキの入り口に立ち止まって
青ざめた顔で言った
「お心遣いはありがたいんですけど・・・
仕事帰りでこんな高級なお店にふさわしい
服装じゃありませんし・・・
持ち合わせもありません 」
今や寿司屋を前にして怯え切っている彼女の
変わり様を見て大和は目を見張った
さっきまで契約交渉の時はいたって冷静だった彼女が
たかが高級寿司と聞いただけで途端にしり込みして
おどおどしている
「ここはドレスコードがあるような店じゃないし
僕は腹ペコだし君を送って行く前に
何か腹に入れる必要がある
僕といる時は僕がすべてご馳走する
値段は気にしなくていいんですよ 」
「しかし看板がありません!
恐ろしい話です!お作法も知りません!」
大和は思った
今まで自分が一緒に食事をしようと女性を説得
しなければならないのはこれが初めてだった
彼女もそれに気づいてるのか
いたたまれないような顔をしている
「作法なんか何も気にしなくていいですよ
とにかく5分以内に何か食えるなら
他の事はどうだっていい 」
大和はまだためらっている彼女を促して
寿司屋に入った
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