chapter 3 偽装契約

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・・・・ 杏奈は二階の自分の部屋で佐奈と父を乗せた車が 駐車場から出て行く音を黙って聞いていた ドレッサーの鏡の前に座って小さくため息をついて 先日の大和とのやり取りを思い出す 「今週の日曜日ですね・・・・ 明日からペルシャ湾の出向所に行きますが 多分間に合う様に帰ってこれると思います」 :*゚..:。:.   .:*゚:.。:  :*゚..:。:.   .:*゚:.。: 佐奈の誕生日パーティーの当日になっても 彼からはなんの連絡もなかった 彼が果たして今日このパーティーに 間に合うかもどうかわからない・・・ 来てほしいような来てほしくないような・・ 杏奈は複雑な気持ちに駆られていた しかしもしも彼が来た時のために 杏奈は婚約者を迎える時に ふさわしいように念入りにお洒落した 昨日も時間もかけてマルイの高級ブティック をあれこれ品定めしては どの服が最も自分を美しく見せてくれるか そんなことばかりを気にして洋服を選んだ そして杏奈が購入した服は 婚約者の彼を迎えるのにふさわしい服装として いつものカチッとした秘書のタイトスーツではなく スナイデルの女性らしいシフォンのふわりと したピンクのドット柄のワンピースだった メイクは目元を強調するだけのもので 髪は毛先だけ綺麗に巻き フェラガモノのカチューシャを付け 良い匂いのするヘアオイルをつけた
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