chapter 3 偽装契約

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「まぁ・・めずらしいわね 貴方がこんな可愛らしいお洋服を着るなんて」 階段を降りて来た杏奈に廊下から 母の美佐江が驚いて杏奈を下から上へ何度も見た 「ちょっと・・・気分を変えて見たくなったの」 「気分を変えることは良い事だわ」 「あ・・・あの母さん・・・ もしかしたら今日お客さんが来るかもしれないの・・」 「あら?どなた? 」 「ん・・でも来ないかもしれない 」 「煮え切らない子ね 」 「もし来れないなら連絡入れるって言ってたから まだ連絡ないけど・・・」 玄関先でクラクションが鳴る音がした 父が佐奈と友達を乗せて帰って来た バタンと玄関のドアが開いた瞬間 佐奈をはじめティーンエイジャーの少女達が キャァキャァ口々にしゃべり続けながら雪崩のように塊になってリビングに入って行った 「それじゃぁ その方の分のお寿司も追加注文しなきゃね! 母さんちょっとショッピングモールに お寿司取りに行ってくるわ ああ・・・ それとカンナは今日は来ないって言ってたわ 」 「そう・・・・・ 」 それを聞いて杏奈は少しホッとした まだカンナと顔を合わす心の準備が自分には 出来ていなかった 今日の主役の佐奈はいつもよりもいきいきして 茶目ぶりも最高潮といった所だ この家を買ったばかりの当時はめずらしかった 20帖のリビングも 目下これだけの人が集まったらどこも手狭で 佐奈達は好例のオンラインネットテレビでの カラオケ大会が始まっていた 父登は自分の役目は終わったと いそいそと自室へ引っ込んだ うららかな日曜の午後の三時 杏奈は小さくため息をついた 多分・・・・彼はもう来ないよね・・・・・・ なんだか残念なような ホッとしたような・・・・・ 複雑な気持ちを抱えたまま杏奈は買ったばかりの ワンピースのシワを整えた
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