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大和はトランクからとても素敵なキラキラした
包装紙のガーベラのアレンジ花束を取り出し
ゆっくり佐奈へ近づいて行った
「お誕生日おめでとう佐奈ちゃん」
大和がかがんでニッコリ微笑んで
佐奈に花束を渡した
その仕草はまるで一国のプリンスの様だった
キャーーーーーーッッと一斉に
佐奈の後ろのクラスメイトから奇声が発せられた
「あ・・・・あの・・・
その・・・ 」
佐奈は真っ赤になって口をパクパクさせている
「佐奈!
助けていただいた大和さんに荷物を運ばせる気?
ここへきて手伝いなさい!
お友達もお願いね!あなた達の食べ物よ!」
と母が佐奈に命令した
そんなものだから佐奈とそのクラスメイトは母が
買ってきた荷物を持ってしかたがなく
ほぼ強制的に家の中へ撤収となった
母は長女に愛する人をひな鳥の様な
ティーンエイジャー達に冷やかされないように
迎える機会を杏奈に与えてやろうと気を利かせたのだ
杏奈はそれを察して頬を赤らめながら
玄関のドアを閉めてアストンマーティンから
降りたばかりの彼を迎え入れた
長身の彼を見上げて杏奈は軽い驚きを感じた
5日間合わなかっただけで彼はまた変わったようだった
ペルシャ湾の日差しは彼の肌を健康的に
日焼けをさせて微笑んだ彼の真っ白い歯が際立った
ただそれだけなのに杏奈は急に心臓がドキドキしだした
聞きたいことはいっぱいあった
どうして母と一緒に来たのか・・・
彼は母と何を話したのだろうか・・・・
なのに言葉が上手く出てこない
「本当に・・・いらして下さったのですね・・・」
「もちろんです
言ったはずですよ、間に合うように帰るって 」
彼の言い方はまるで自分が決めたことは
当然そうなるのだと言うような言い方だった
そして小さなピンクのバラのブーケを杏奈に差し出した
そのバラを受け取った杏奈は鼻を寄せて
香りを楽しんだ
甘く豊潤な香りが鼻孔をくすぐる
「とても綺麗ですわ・・・・
ありがとうございます・・・
その・・ずいぶん女性にお花を贈るのに
慣れていらっしゃるのね・・」
杏奈は上目づかいで礼を言った
「とんでもない!心臓バクバクですよ」
そう言って彼は魅力的に微笑んだ
「この花を買おうとショッピングモールに
寄ったらお母様の車が故障しててね
その隣に偶然僕がいたってわけだ
でもよかったですよ
あなたのお母様は花のセンスがおありだ」
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