chapter 3 偽装契約

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大和はトランクからとても素敵なキラキラした 包装紙のガーベラのアレンジ花束を取り出し ゆっくり佐奈へ近づいて行った   「お誕生日おめでとう佐奈ちゃん」 大和がかがんでニッコリ微笑んで 佐奈に花束を渡した その仕草はまるで一国のプリンスの様だった キャーーーーーーッッと一斉に 佐奈の後ろのクラスメイトから奇声が発せられた 「あ・・・・あの・・・ その・・・         」 佐奈は真っ赤になって口をパクパクさせている   「佐奈! 助けていただいた大和さんに荷物を運ばせる気? ここへきて手伝いなさい! お友達もお願いね!あなた達の食べ物よ!」 と母が佐奈に命令した そんなものだから佐奈とそのクラスメイトは母が 買ってきた荷物を持ってしかたがなく ほぼ強制的に家の中へ撤収となった 母は長女に愛する人をひな鳥の様な ティーンエイジャー達に冷やかされないように 迎える機会を杏奈に与えてやろうと気を利かせたのだ   杏奈はそれを察して頬を赤らめながら 玄関のドアを閉めてアストンマーティンから 降りたばかりの彼を迎え入れた    長身の彼を見上げて杏奈は軽い驚きを感じた 5日間合わなかっただけで彼はまた変わったようだった ペルシャ湾の日差しは彼の肌を健康的に 日焼けをさせて微笑んだ彼の真っ白い歯が際立った ただそれだけなのに杏奈は急に心臓がドキドキしだした 聞きたいことはいっぱいあった どうして母と一緒に来たのか・・・ 彼は母と何を話したのだろうか・・・・ なのに言葉が上手く出てこない 「本当に・・・いらして下さったのですね・・・」 「もちろんです 言ったはずですよ、間に合うように帰るって 」 彼の言い方はまるで自分が決めたことは 当然そうなるのだと言うような言い方だった そして小さなピンクのバラのブーケを杏奈に差し出した そのバラを受け取った杏奈は鼻を寄せて 香りを楽しんだ 甘く豊潤な香りが鼻孔をくすぐる 「とても綺麗ですわ・・・・ ありがとうございます・・・ その・・ずいぶん女性にお花を贈るのに 慣れていらっしゃるのね・・」 杏奈は上目づかいで礼を言った 「とんでもない!心臓バクバクですよ」 そう言って彼は魅力的に微笑んだ 「この花を買おうとショッピングモールに 寄ったらお母様の車が故障しててね その隣に偶然僕がいたってわけだ  でもよかったですよ あなたのお母様は花のセンスがおありだ」
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