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「あっそうそう・・・
忘れていました
ちょっと荷物を取ってきますからお待ちください」
そう言うと何だろうと不思議に待っている
姫野家の家族を残してしばらくして
大和が大きな箱を抱えて戻って来た
キゃーーーーっ!!
「ジル・スチュアートのメイクコフレセットーーーー!
しかも限定品よーーーこれ欲しかったの~~!!」
「お誕生日ということで何をプレゼントしたら
良いか分からなかったので
阪急百貨店のうち専属のコンシェルジュに
ティーンエイジャーの佐奈さんの喜ぶような
ものをプレゼントしたいと相談したんですが・・・・
喜んでもらえたようで良かった 」
佐奈が大和に渡された紙袋をキャーキャー
言いながら片っ端から開けて中身を確かめている
「これはお母様に 」
そう言って大和は大きなオレンジ色の箱を
母に差し出した
箱を開けてみると上品なクリーム色の
エルメスのバーキンが顔を出した
「信じ・・・・られないわ・・・
どうしましょう・・・・ 」
母は素敵な大和からの贈り物に
今にも卒倒しそうになって震えていた
ゴホンッ
「よかったじゃないか・・・・お前達・・」
父登が腕を組んでいかにも不服そうに言った
そこへすかさず大和が登の傍に行って耳打ちした
「そしてお父様にはこれを 」
キラリと登の前にかざしたのは車の電子キーだった
「こ・・・・これはっ・・・・・ 」
登がワナワナと震えて羨望のまなざしで
その赤のエンブレム「撥ね馬」の刻印がついた
電子キーを見つめている
「実は・・・
杏奈さんと島根に行っている間ディーラーに
預けておこうかと思ってたんですが・・・
こういう車はご存じの通り乗らないと
機械が痛みますからね
なので出発するときにここに置いて行きますので
どうぞお好きにお乗りください
ETCとガソリンカードも入っています
そして飽きたらお返し下されば結構ですから」
「フ・・・・フェラー・・リ・・・
テッサロッサ・・・三・四リットルエンジン・・
三・九秒でゼロから百キロまで加速!
F1パドルシフト・トランスミッション・・
カーボンセラミック・ブレーキ・・・・ 」
登が震えながらうわの空でつぶやく
登の部屋にはこれの400分の一の小さな
模型が丁寧に何個も飾られている
う~ん・・・・バタンッ!
「最高速度・・さ・・・三百キロ・・・・ 」
「キャー!お父さん!」
「あなた!しっかり」
大和に渡された憧れのフェラーリのキーを
握りしめて
登は泡を吹いて後ろから椅子ごと倒れて失神した
その横で佐奈は必死で大和にもらった
ジル・スチュアートのコスメを全色
顔中に塗りたくって自撮りに勤しんでいた
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