chapter 3 偽装契約

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「あっそうそう・・・ 忘れていました ちょっと荷物を取ってきますからお待ちください」    そう言うと何だろうと不思議に待っている 姫野家の家族を残してしばらくして 大和が大きな箱を抱えて戻って来た キゃーーーーっ!! 「ジル・スチュアートのメイクコフレセットーーーー! しかも限定品よーーーこれ欲しかったの~~!!」 「お誕生日ということで何をプレゼントしたら 良いか分からなかったので 阪急百貨店のうち専属のコンシェルジュに ティーンエイジャーの佐奈さんの喜ぶような ものをプレゼントしたいと相談したんですが・・・・ 喜んでもらえたようで良かった 」 佐奈が大和に渡された紙袋をキャーキャー 言いながら片っ端から開けて中身を確かめている 「これはお母様に 」 そう言って大和は大きなオレンジ色の箱を 母に差し出した 箱を開けてみると上品なクリーム色の エルメスのバーキンが顔を出した 「信じ・・・・られないわ・・・ どうしましょう・・・・      」 母は素敵な大和からの贈り物に 今にも卒倒しそうになって震えていた ゴホンッ 「よかったじゃないか・・・・お前達・・」 父登が腕を組んでいかにも不服そうに言った そこへすかさず大和が登の傍に行って耳打ちした 「そしてお父様にはこれを 」 キラリと登の前にかざしたのは車の電子キーだった 「こ・・・・これはっ・・・・・ 」 登がワナワナと震えて羨望のまなざしで その赤のエンブレム「撥ね馬」の刻印がついた 電子キーを見つめている   「実は・・・ 杏奈さんと島根に行っている間ディーラーに 預けておこうかと思ってたんですが・・・ こういう車はご存じの通り乗らないと 機械が痛みますからね なので出発するときにここに置いて行きますので どうぞお好きにお乗りください ETCとガソリンカードも入っています そして飽きたらお返し下されば結構ですから」 「フ・・・・フェラー・・リ・・・ テッサロッサ・・・三・四リットルエンジン・・ 三・九秒でゼロから百キロまで加速! F1パドルシフト・トランスミッション・・ カーボンセラミック・ブレーキ・・・・  」 登が震えながらうわの空でつぶやく 登の部屋にはこれの400分の一の小さな 模型が丁寧に何個も飾られている う~ん・・・・バタンッ! 「最高速度・・さ・・・三百キロ・・・・ 」   「キャー!お父さん!」 「あなた!しっかり」 大和に渡された憧れのフェラーリのキーを 握りしめて 登は泡を吹いて後ろから椅子ごと倒れて失神した その横で佐奈は必死で大和にもらった ジル・スチュアートのコスメを全色 顔中に塗りたくって自撮りに勤しんでいた
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