7610人が本棚に入れています
本棚に追加
どうか上手くやり過ごせますように・・・
杏奈は思った
そうこうしていると大和がそろそろお暇する時間だと言い彼が杏奈の家族に別れの挨拶をして
杏奈は家の玄関先の駐車場まで大和を送りに出た
しばらく二人で向き合っていると
大和は落ち着いた口調でこう言った
「あなたがそんな事では
この計画はうまく行きませんよ・・・ 」
「すっ!すいません!!
もっと上手く演じれるように
頑張ります!頑張りますから!どうか―」
杏奈は途端に青ざめ大和に懇願した
「しーっ・・・・
妹さんとお母さんが二階から覗いていますよ」
大和はそっと距離を詰め小声で杏奈に耳打ちした
彼のカルバンクラインの香水の香りがふわりと
杏奈の鼻孔をくすぐった
思わず心臓がドキンと跳ねあがる
「本当はひざまずくべきなんだろうが・・・・」
大和はいたずらっぽく瞳をキラキラ輝かせ
ポケットから小さな黒いベルベットの箱を取り出した
杏奈は咄嗟にそれがなんであるか察して
息を飲んだ
―彼は何をしようとしているの?
海運王はその小さな箱を杏奈の方に向けて開けた
杏奈は身を乗り出して覗き込んだ
中身は信じられないぐらに美しい
銀線細工に囲まれたティアドロップ形の
ダイヤモンドの指輪が現れた
と同時に二階の佐奈の部屋の窓から
「キャッ!・・・・」
と声がした
杏奈は息を飲んだ
みごとな指輪だ
こんな外灯だけの薄暗い玄関先でも
この指輪だけ別世界のようにキラキラ輝いている
まるで指輪が意思を持って自らが輝きを放っているようだ
杏奈は美しい宝石に目を奪われそのまま
動けなくなった
最初のコメントを投稿しよう!