chapter 3 偽装契約

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「君の好みでないのならすぐに別の物を用意させるよ 」 彼は呆然としている杏奈の手を掴んだ 驚くほど優しい掴み方でその気になればやすやすと 手を引き抜くことができそうなのに 杏奈は石になったようにじっとしていた そして彼は杏奈の左薬指に指輪を はめて満足そうに言った 「うん・・・ピッタリだな」 彼の言葉がどういう意味か分からないうちに 彼は素早く杏奈を腕に抱きこむと まるで映画のワンシーンのように 杏奈にゆっくりキスをした 再び二階の窓から叫び声が聞こえた 杏奈はまさか彼がこんな振る舞いに出るとは 思わなかったので 驚きで身動きも出来なかった 以外にも柔らかい彼の唇が優しく杏奈の唇を圧迫する そして少し唇を離して杏奈の顔を伺っている 「あ・・・あの・・・・ 何を・・・・     」 杏奈は海運王をマジマジと見つめた クスッ 「何をしているのかって? 12歳も年下の美しい女性を花嫁にもらうので のぼせ上がっている中年男の役を演じているんですよ」 演技?・・・・・ 「さぁ目を閉じて 」 再び彼の顔が近づいてきて唇が重なる 今度は彼は慎重に誘惑するかのように 杏奈の上の唇・・・下の唇・・・と 順番に軽く吸った そして後頭部を手で優しく包み込まれ 彼の唇が杏奈に口を開けろと命令した 杏奈が目を閉じ彼に従った瞬間 自分の口内をゆっくりと探る彼の大きな 舌のなめらかで温かな感触に杏奈は息を飲んだ 彼の舌が自分の中で動く圧倒的な感覚 その度下腹部の奥がきゅっと締まり ぞくぞくと快感に襲われる 口の中がこんなに感じるなんて初めての体験だった 心なしか彼はミントの味がした 息をのむような一瞬一瞬のあいだ 彼の舌は杏奈の口の中をまさに 容赦なく探った 血管に火の粉が入り込んだかのごとく 熱が体じゅうに広がった
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