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どれぐらいそうしていただろう
でもきっと数秒に違いない
やがて彼の唇が離れると
杏奈は喉の奥からかすかなあえぎ声を漏らした
そんなはしたない自分の声を聴いて
杏奈は思わず真っ赤になった
彼の鼻が頬に擦りつけられ
すこし伸びた彼の髭剃り跡が
杏奈の柔らかい肌を刺激する
彼はそのまま唇を首までおろしていき
まるで甘いものでも味わうかのように
杏奈の首筋をチュッと音を立てて軽く吸った
途端に背筋にゾクゾクと快感が走り
二の腕の後ろに鳥肌が立った
彼に離された後もふわふわして
杏奈は自分は平衡感覚を失ったのではと思うぐらい
まっすぐ立っているだけがやっとだった
彼がキラキラした瞳で杏奈を見つめ
そっと囁いた
「上手く演じようとすればボロが出ます
あなたはただ・・・・・
僕に愛されて幸せだという顔を
していてくださればそれでいいですよ」
もう一度彼は名残惜しそうに杏奈の
右の手のひらにキスをし
おやすみと告げてアストンマーティンの
排気音を轟かせて去って行った
彼が去った後も
しばらく杏奈はその場にたたずみ
佐奈と美佐江が玄関先に呼びに出るまで
誰もいない街頭の下
いつまでも呆然と立ち尽くしていた
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