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 日下部さんが落ちたファイルを見下ろしてため息をつき、拾おうと振り向く。と、私と目が合ってしまい、目玉が落ちそうなほど見開いて 「どわっ!!」 と声を上げた。驚きが収まらない様子の日下部さんは後ずさり、足元の段ボールに踵をひっかける。見事に尻もちをついてしまい、両足をやや宙に浮かせて広げ、その間から私を凝視していた。  一部始終を真顔で眺めていた私は、  さすがは日下部さん。尻もち姿も絵に描いたような尻もち姿ですね。 などと思いながら頭を下げた。 「お疲れ様です、日下部さん。」 「お、お疲れ様です、影井(かげい)さん。」  引きつった顔で言う日下部さんを見つめて 「僭越ですが、正しくは掛井(かけい)です。」 と訂正する。  日下部さんとは対照的に、地味で目立たない私は、長砂さんから”影井”という隠し名を授与されている。本人に伝わってしまっているので、隠せていないのだけれど。 「あ!すみません!」  日下部さんが慌てて床の上で座り直し、頭を下げた。
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