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何度季節が巡っても、秋になれば思い出す。
菊花火といちご味。
流した涙と遠い日の約束。
君はまるで秋を吹き抜ける色なき風のよう。
透明な心に寂しさと憂いを隠して、でも、時に紅葉を空高く舞い上げたように赤く鮮やかに色づいて……
「くるみ、用意はできたの?」
「うん」
背中まで伸びた髪を一つに結い、ジャケットにシュッと手を通す。
新調したヒールに踵を押し込み、玄関ドアを両手で開けば、ぶら下がったウィンドチャイムの音色に涼しげな秋の匂いが絡んだ。
「じゃあ、行ってくるね」
パスポートを鞄に差し込み玄関先の植木鉢を横切る。
朝日は今日も燦然と輝き、夏向が走り続けた道の先まで遠く遠く照らしていた。
— 『色なき風が吹く頃に END』 —
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